こんにちは、リアデジ代表の鈴木です。7月に起きた令和8年熊本地震で被災された皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。被災地では今も復旧が続いています。一日も早く日常の暮らしと仕事が戻ることを願っています。
地震のニュースを見て、「うちの会社は大丈夫だろうか」と感じた経営者の方も多いのではないでしょうか。この記事では、熊本と能登の地震のあとに行われた企業アンケートと能登半島地震で被災した会社の実例をもとに、事業継続力強化計画(ジギョケイ)を作成すべき理由を考えます。ジギョケイの必要性を制度のメリットからではなく「災害のときに本当に役立つか」という視点から見ていきます。
熊本・能登の地震のあと、企業は防災の大切さを実感した
令和8年熊本地震:8割超が対策を見直したい
帝国データバンクは、令和8年熊本地震のあとに、全国の938社にアンケートを行いました(2026年8月発表)。地震の影響について『影響がある(見込み含む)』と答えた企業は15.7%で、九州に限ると5割を超えています。九州の外でも取引先の工場が止まって受注が減る、資材が届かないといった影響が出ています。
同じアンケートで、何らかの防災対策を新たに導入、または見直したいと答えた企業は84.6%でした。上位は次のとおりです。
・社内連絡網の整備・確認(45.0%)
・災害時の避難行動マニュアルの整備(38.5%)
・社内対応体制の整備・ルール化(37.8%)
・飲料水や非常食などの用意(37.3%)
・安否確認の体制・システムの整備(33.0%)
(出典:帝国データバンク「令和8年熊本地震の影響と防災に関する企業アンケート」)

能登半島地震:95%が実感、BCPづくりは5社に1社
2024年1月の能登半島地震後にも、帝国データバンクが全国の1,255社にアンケートを行っています。地震を機に「企業防災」の大切さを改めて実感した企業は94.9%にのぼりました。上位は、飲料水や非常食の備蓄(39.2%)と社内連絡網の整備・確認(38.3%)です。
一方で、「事業継続計画(BCP)自体の策定・見直し」を挙げた企業は20.6%で、5社に1社にとどまりました(出典:帝国データバンク「能登半島地震の影響と防災に関する企業アンケート」)。BCPとは、災害が起きても事業を続けられるように、あらかじめ決めておく計画のことです。
大切だと感じることと、計画を作ることの間には、大きな差があります。よくあるご相談では「必要なのは分かっているが、何から手を付ければよいか分からない」という声をうかがいます。備蓄は始めやすい一方、「誰が、何を、どの順番で行うか」を決める計画づくりは、後回しになりやすいのです。
能登の3社に学ぶ、事前の備えが生きた場面
中部経済産業局は、能登半島地震で被災したものづくり企業16社の復旧の取り組みを、事例集にまとめています(出典:中部経済産業局「企業の復旧事例集~令和6年能登半島地震の実例から学ぶ~」)。ここでは、その中から3社を紹介します。
高山リード:身の丈のBCPと製品の固定
石川県中能登町に工場がある高山リード(従業員85名)は、震度6弱の揺れを受けました。同社は2019年にリスク管理委員会を設け、安否確認システムを導入していました。BCPは「身の丈に合ったもの」を目指し、簡潔で毎年見直しやすい内容にしていました。
地震の翌日の午前には、全従業員の無事を確認しています。従業員の生活を優先して数日休業したうえで、1月7日に復旧作業を1日で終え、8日に操業を再開しました。さらに、前年の地震の教訓から、連休前には製品をベルトで固定するよう指示していました。そのおかげで、工場にあった300枚以上の製品のうち、無傷でなかったのは1枚だけでした。納期どおりに納品でき、取引先との信頼を守ることにつながっています。
NTN能登製作所:大手のグループ会社でも足りなかったもの
石川県志賀町のNTN能登製作所(従業員148名)は、大手のNTNグループの会社です。2019年にBCPを策定し、毎年、従業員全員で避難訓練をしていました。震度7の揺れのあと、BCPに書いた手順が初動対応を速めました。
それでも、備えは十分ではありませんでした。水や食料を用意していましたが、断水が長引き「全く足りなかった」といいます。工場の断水は2月8日まで続き、全従業員に出社を依頼できたのは2月16日、通常生産の再開は3月25日でした。ほかの工場での代替生産も、製品や設備の違いから簡単ではありませんでした。大手のグループ会社でも、作った計画を実際の災害に合わせて見直し続ける必要があることが分かります。
白山:A4用紙2枚のBCPと、ホームページでの情報発信
同じ志賀町に工場がある白山(従業員129名)は、A4用紙2枚にまとめた簡潔なBCPを作っていました。安否確認、物資の備蓄、仕入先との連携、優先して復旧する業務、復旧の目標時期を書き、安否確認や避難の訓練も行っていました。
地震の翌日には、ホームページに被害の情報を載せ、3月末までに9回、復旧の状況を発信しました。この発信が取引先の信頼につながり、海外の顧客との直接の取引も生まれています。ただし社長は「BCPは全く足りていなかった」と振り返り、操業中に地震が起きた場合の手順などを見直しています。計画は作って終わりではなく、経験をもとに育てていくものだと分かります。
ジギョケイの必要性:事例の備えと重なる「取り組みやすいBCP」
事業継続力強化計画は、中小企業が作った防災・減災の事前対策の計画を、経済産業大臣が認定する制度です。中小企業庁は、この制度を「中小企業のための取り組みやすいBCP」と位置づけています。
計画に書く主な内容は、自社の災害リスクと影響、地震が起きたときの初動対応(人命の安全確保、安否確認、被害状況の把握)、ヒト・モノ・カネ・情報への事前対策、平時の推進体制と訓練です。3社で役に立った安否確認の仕組み、設備や製品の固定、初動の手順、取引先との連絡は、どれもこの計画で整理する内容と重なります。つまりジギョケイの必要性は、「認定を受けること」よりも、「いざというときに迷わず動ける状態を作れること」にあります。
計画は簡潔でかまいません。A4用紙2枚でも、身の丈に合った内容でも、決めておいたことが初動を支えました。ジギョケイを作る理由は、自社に合った最低限の備えを、言葉にして共有しておくことです。
ジギョケイの認定を受けると、防災・減災のための設備投資の税制優遇、金融支援、一部の補助金での審査の加点などを受けられます。詳しくは事業継続力強化計画(ジギョケイ)作成のススメで紹介しています。
ただ、加点のためだけに作った計画は、いざというときに使われないことがあります。3社に共通していたのは、計画を従業員と共有し、訓練で使い、見直していたことです。災害で納品が止まれば、売上だけでなく、長年かけて築いた信頼も失いかねません。ジギョケイは、売上と取引先を守るための備えでもあります。
よくある質問
小さな会社でも、ジギョケイを作る必要はありますか?
ジギョケイとBCPは、どちらを作ればよいですか?
一度作れば、それで終わりですか?
まとめ
熊本と能登の地震のあと、多くの企業が防災の大切さを実感しました。それでも、計画づくりまで進む会社は多くありません。能登の3社の事例は、簡潔な計画と日頃の訓練が、従業員の安全と取引先からの信頼を守ることを示しています。ジギョケイの必要性は、まさにそこにあります。
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