【脱・下請け】中小企業の新規開拓ガイド(後編)強みを武器に変える!提案書作成からアポイント取得までのステップ
目次
こんにちは事務所代表の鈴木です。
ここまでで「自社ならではの強み」は見つかりましたでしょうか?
まだ自信が持てなくても大丈夫です。ここから先を読み進めながら、少しずつ形にしていきましょう。
後編では洗い出した強みを顧客が「話を聞いてみたい」と思う「提案」へと変換し、実際にアポイントを獲得するまでの具体的なステップを解説します。
1. 「顧客の顧客」まで考える:視点を一段高くする
「ウチの製品は性能が良いですよ」「短納期で納品できますよ」
これだけを伝えても、残念ながら今の時代の顧客には響きません。なぜなら顧客が一番知りたいのは、製品そのものではなく「その製品を導入したら、自社はどう儲かるのか?」という点だからです。
そこで重要になるのが、「顧客の顧客(エンドユーザー)視点」を取り入れることです。あなたの会社の製品を使うことで、顧客のビジネスにどのようなメリットが生まれるのかを論理的に説明しましょう。
具体例で見る「エンドユーザー視点」の思考法
例えば、あなたの会社が「他社製品よりもコンパクトに収納できる健康器具」を製造しており、それを顧客(このケースでは販売代理店)に提案するとします。
- 自社の強み(機能的価値)
使用しない時は折りたたんで隙間に収納できる。 - 顧客の顧客(エンドユーザー)のメリット
「部屋が狭いから置きたくない」という悩みが解消される。
クローゼットや家具の隙間にしまえるので、生活感が出ない。
簡単に持ち運びできるので、リビングでも寝室でも使える。 - 顧客(販売代理店)への提案メリット
「今まで『場所をとる』という理由で購入を諦めていた層(都心のマンション居住者など)を新規ターゲットにできます」
「場所を選ばないので、キャンプなどのアウトドア需要も取り込めます」
→ 結果:「御社の新規顧客開拓につながり、売上アップに貢献できます」
ここまで言語化できて初めて、相手企業は「なるほど、それなら扱う価値があるな」と判断します。自社の強みが、取引先の「競争力強化」や「売上拡大」にどう繋がるのか。このロジックを組み立てることが、法人営業における最大の鍵です。
2. 提案書を作成する:順番を間違えてはいけない
強みとメリットが整理できたら、それを伝えるための提案書を作成します。
ここで多くの人がやりがちなミスが、「自社製品のカタログ」を作ってしまうことです。
前述の通り、顧客は「自分の課題」にしか興味がありません。提案書の構成は、必ず以下の順番にしてください。
刺さる提案書の基本構成
- 相手の「困りごと(課題)」の提示
「〇〇業界では最近、××という課題が増えていませんか?」
「御社のエンドユーザー様から、△△といった声はありませんか?」
まず相手に「そうそう、それで困っているんだよ」と共感してもらうことから始めます。 - 課題の「原因」の分析
なぜその課題が起きているのか、プロの視点で分析します。 - 「解決策(あるべき姿)」の提示
「この問題を解決して、〇〇な状態にできたら理想的ではありませんか?」
ここでもまだ、自社製品の話はしません。 - 自社製品・サービスの紹介(解決の手段)
「実は、当社のこの製品なら、その課題を解決できます」
ここでようやく、前章で考えた「強み」と「メリット」を提示します。 - 実績・エビデンス
「実際に導入された企業様では、このような成果が出ています」
製品の詳しいスペックや機能は、一番最後で構いません。まずは「この提案は聞く価値がある」と思わせることに集中しましょう。
3. アポイントの候補先をリスト化する:宝の山はどこにある?
素晴らしい提案書ができても、届ける相手がいなければ意味がありません。
「どこに営業をかければいいか分からない」という場合は、以下の2つからアタックリストを作成してみましょう。
① しばらく取引のなかった「休眠顧客」
過去に一度でも取引があった企業は、全く新規の企業よりもハードルが低いです。
「以前お世話になった〇〇です。この度、新しく〇〇という取り組みを始めたのですが、御社のお役に立てるのではないかと思いご連絡しました」
といったアプローチであれば、話を聞いてもらいやすいでしょう。名刺フォルダや過去の販売管理システムを掘り返してみてください。
② 業界団体・組合の会員リスト
ターゲットとする業種の組合や協会のホームページには、会員企業の一覧が掲載されていることが多いです。これらはその業界で一定の事業規模を持つ企業のリストであり、確度の高いアタックリストになります。地域別、業種別にリストアップしていきましょう。
4. アポイントのスクリプト作成とゲートキーパー対策
リストができたら、いよいよアポイントの取得です。
ここも「気合」ではなく「仕組み」で攻略します。
誰でも同じように話せる「トークスクリプト」
電話をかける担当者が誰であっても、一定の品質で自社の価値を伝えられるよう、台本(トークスクリプト)を用意します。
「挨拶 → 相手の課題への共感 → 解決策の提示(自社の強み) → アポイントの打診」という流れを、簡潔な言葉でまとめます。
最初から完璧なものを作る必要はありません。実際に電話をかけながら、「この言い回しの方が反応が良い」「ここで断られることが多いから切り返しを考えよう」と、チームで修正を重ねていくことが重要です。
強敵「ゲートキーパー」を突破するFAX作戦
中小企業の新規開拓において、電話口に出る受付担当者(ゲートキーパー)は大きな壁です。彼らの仕事は「社長や担当者の時間を奪う、怪しい営業電話をブロックすること」だからです。
まともに取り合ってもらえない場合に有効なのが、「FAX資料の送付」です。メールと違い、FAXは物理的な紙としてオフィスに出力されるため、担当者の目に触れる確率が格段に上がります。
【FAX資料のポイント】
- A4用紙1枚で完結させる。
- 文字は大きく、パッと見て内容がわかるように。
- 売り込みではなく「〇〇の課題を解決する事例のご案内」という体裁にする。
- 具体的な実績数字(コスト〇%削減など)を目立たせる。
5. いざ実践!電話でのアポイント取得
準備は整いました。リストに対して電話をかけていきます。
ここで最も大切なのは、マインドセットです。
断られるのが当たり前。気にしない。
新規のテレアポは、100件かけて3件アポが取れれば大成功、という世界です。
つまり、97回以上は断られます。
「ガチャ切り」されたり、冷たくあしらわれたりしても、人格を否定されたわけではありません。「今はタイミングじゃなかったんだな」と割り切り、淡々と次へ進みましょう。
重要テクニック:「FAX送付+到着確認電話」のコンボ
担当者に繋いでもらえず、「資料を送っておいて」と言われた場合、前述のFAX資料を送付します。
そしてここからが最も重要です。FAXを送ったら、必ずその日のうちに(できれば数十分後に)「先ほどFAXをお送りした件で、届いているか確認のお電話をしたのですが」ともう一度電話をかけてください。
これには強力な効果があります。
- 受付の人に「ただの営業電話ではない」という印象を与え、丁寧な対応を引き出せる。
- 「届いているか確認してきます」と、担当者のデスクまでFAXを持って行ってもらえる可能性が高まる。
- 運が良ければ、そのまま担当者に電話を代わってもらえることがある。
このひと手間をかけるだけで、アポイントへの到達率は大きく変わります。
まとめ:まずは「動く」ことから始めよう
長年、親会社からの仕事に真摯に向き合ってきた御社には、確かな技術と信頼の積み重ねがあるはずです。新規開拓は、その価値をまだ見ぬ顧客に届けるための「親切な案内」に他なりません。
- 法人取引の特徴を知る。
- 自社の強みを棚卸しする。
- 「顧客の顧客」視点でメリットを言語化する。
- 相手の課題から始まる提案書を作る。
- リストとスクリプトを用意し、FAXも活用してアプローチする。
これらはすべて、才能やセンスではなく、論理的な「仕組み」です。一度構築してしまえば、会社にとってかけがえのない資産となります。
最初はうまくいかないことの方が多いかもしれません。しかし、親会社からの仕事に真摯に向き合い続けてきた御社であれば、その価値を理解してくれる新しい顧客は必ず見つかります。
まずはリストアップから、あるいはトークスクリプトの下書きからでも構いません。今日、小さな一歩を踏み出してみましょう。
既存顧客への依存から脱却しないと環境が変化した場合に危険かもしれません。
経営者として新規開拓の必要性は感じているが、「社内の人的リソースが足りず取り組めない」「車内での反対が大きい」という企業も多いと思います。
社内に変化を起こしたいときにお困りでしたら当事務所へお声がけください。
ではまた!

